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STORE SOUND TRACK
by haruka nakamura 2022 Summer

「Light years」
/ ライナーノーツのような制作日誌 Ⅰ

THE NORTH FACE Sphereのエントランスをくぐると、心地よい音楽が耳を通り抜ける。「移り変わる季節と共にある音楽」をテーマに、音楽家の haruka nakamuraが春夏秋冬の季節ごとに制作するオリジナルサウンド・トラックだ。

この店舗のためだけに制作された全9曲 / 44分の作品は、1年ほど前から北海道へ移住し、生まれ育った北国の風景の中で自身のこれまでの歩んできた道のりを思い返しながら、その延長線上を模索するように作られた。そして、これから1年間、四季それぞれにアルバム一枚分のサウンド・トラックがリリースされる。

ブランドへのサウンド・トラックや、コレクションの音楽などは、これまで幾つか制作させて頂いたことがありますが、「春夏秋冬」四季それぞれにアルバム一枚分ほどの楽曲たちを作るという企画は今回が初めてです。

「移り変わる季節と共にある音楽」というテーマは、多くのイメージを想起させてくれます。

依頼されたタイミングも、巡り合わせを感じるものでした。
一年ほど前から北海道へ移住し、故郷の北国に立ち戻った生活を送っており、最初の冬はTHE NORTH FACEのバルトロライト・ジャケットを着て過ごしていたのです。
北へ戻った理由としては幼少の記憶への回帰や、星野道夫さんの言葉や写真、アイヌの歌など多くのインスピレーションの源流への希求などがありますが、東京で暮らしていた頃は、二子玉川のノースフェイス・カフェが近所で日々通っていました。
いつもコーヒーを淹れてくれた優しいスタッフさんたちの笑顔を懐かしく思います。
元気にしているかな、と。ふと思ったりします。


北国に戻ってまず生まれたのが
「ビートのある音楽」でした。
それが今回のサントラの原型になっています。
Nujabesさんとのアルバム「MELODICA」をリリースしてから10年ほどの長い間、ビートがある音楽は作っていなかったのですが、昨年末に「Nujabes PRAY Reflections」を発表したこともあり、自分の中でいつの間にか高まっていたビートのある音楽の内圧が解放されたような気がしています。
ちょうど、昔よく使っていたサンプラーの新作が12年ぶりに発売され、手にしたことも偶然ではないように感じています。
久しぶりにサンプラーを叩きビートを作る感覚は、やはり胸躍るものでした。
10年でひとつのサイクルが巡ったのです。

作っていると、どこか北国の息吹や温度がサウンドの中にいつの間にか込められているようです。
土地を変えることにより生まれる新しい音楽を、今は楽しんでいます。
窓辺に映る初夏の北海道の緑を眺めながら一人でコツコツとサンプラーを叩き作りました。

今回の音楽はピアノ、ギター、ビート、ベースなども全て一人で制作しています。
テープレコーダーで回転数やピッチを落として、仕上げにアナログ・レコードの質感にしています。意図的なノイズ、モノラル録音の曲もあるので、お店でどのような音が鳴るのか楽しみです。

ギターやピアノも一度、自分で弾いた演奏をサンプリングして刻んで混ぜて料理しています。
そうすると、ひとつのフレーズから本人も気づいていなかった音の表情が立ち現れてくるのです。
音楽の粒の見え方が多角的になります。
この手法は1stアルバム「grace」の時にも行っていたもので、2005年頃に行っていた初期の制作スタイルでした。
村上春樹さんが最初の小説を書いた頃に「一度書いた日本語の文章を英語に書き直し、それをまた和訳し直すような作業をして独自の文体が生まれた」とお話されていましたが、それに少し似ているかも知れません。


まずは夏、そして次の季節へと。
これから一年間。
北からのお便りのように音楽を送ります。


2022年、初夏
haruka nakamura

────haruka nakamuraからのメッセージ

『Light years』
soundtrack for THE NORTH FACE Sphere 22’s

by
haruka nakamura

___


Light years
残照
sunset 1996
ORFE
to the SEA
green grass
夏のピアノフォルテ
Northern sight
讃美歌ひとつ


9tracks / 44min.


haruka nakamura
青森出身 / 音楽家

15歳で音楽をするため上京。
2008年1stアルバム「grace」を発表。
それまで主にギターを弾いていたが、2ndアルバム「twilight」以降、ピアノを主体に音楽を作るようになる。
ミュート・ピアノソロアルバム「スティルライフ」など、いくつかのオリジナル・アルバムを発表。
最新作は「Nujabes Pray Reflections」となる。
2020年より自主レーベル「灯台」を立ち上げ、「灯台通信」で手紙のように自身の言葉を伝える発信を行う。
北海道の馬だけが取り残された島「ユルリ島」とのMVや、ナチュール・ワイン「BEAU PAYSAGE」とのワイン、画家ミロコマチコとのライブペインティングなど多岐にわたるコラボレーションがある。
NHK「ひきこもり先生」Hulu「息をひそめて」など、ドラマ、映画、CMなどの音楽も手がける。

現在はorbe × Meadow TOUR「遠い声」で全国を巡っている。
長い間、旅をしながら音楽を続けていたが、2021年より故郷・北国に帰り音楽をすることにした。

https://www.harukanakamura.com/

Edit: Yusuke Nishimoto(SUB-AUDIO Inc.)